日本の法律では、夫婦になることが出来ないセクシャルマイノリティである同性カップル。
法律的に結婚という形はとれないながら、夫婦のように生活しているカップルも多くいます。
筆者の私は現在結婚して4人の子どもに恵まれ、慌しく騒がしいながら楽しい日々ですが、私自身は実はバイセクシャル。
レズビアンもしくはバイセクシャルの友人も多くいます。
その中には、付き合っていく中でお互いの家族にも挨拶し、一緒に暮らして数年、というカップルもいます。夫婦といって差し支えないような生活です。
同性カップルにとって、家族への紹介のハードルは、異性愛者に比べ少し高いものではありますが、最近は割りと受け入れてくれる雰囲気があるらしく、私の周りのレズビアンの子達は割とカミングアウト済みである事が多いような気がします。
彼女と実家で暮らしたり、親戚のビーチパーティーにカップルとして参加したりと、割とすんなりと受け止められていたりもします。
もちろんそうではない家族もいますし、カミングアウトできずにいる方もいます。
夫婦のようなとはいっても、やはり同性同士のカップルでは子どもは出来ないわけで、真剣に悩んでいる方も多いのです。
異性のカップルの場合ですと、不妊治療を受けることが可能ですが、同性カップルではどうでしょうか。
ここでは、私の友人の話も交えながら多角的に妊活を見ていきたいと思います。
同性カップルの人工授精と体外受精
一般的には、段階を踏んで不妊治療を行っていきます。まずは、基礎体温を測り、排卵日にあわせて夫婦の営みを。。といったところからスタート。
ダメなら卵管の検査などを行い、その結果次第ではあるものの、妊娠するまで次々にステップアップしていき、最終的に人工授精、体外受精を行うといった流れになります。
しかし同性カップルの場合は、一気に「人工受精」、「体外受精」へと話が進みます。
この「人工授精」と「体外受精」、何が違うかご存知でしょうか?
人工授精とは?
「人工授精」とは、配偶者もしくは精子提供者の精液を直接体内に注入して受精を促す方法です。
病院で医師の下で人工授精を行う場合は運動精子のみを選別し注入するようですが、同性カップルの中には、自分たちで排卵日に精子提供者の精子を注射器のようなもので、膣内に注入する方法をとる人もいるそうです。
東京ディズニーランドで初の同性結婚式を挙げたことで有名な、元宝塚の東小雪さん夫婦が取り組んでいる妊活もこの方法で、精子提供者はゲイの男性との事。
精子提供者さえ見つかれば、妊娠できる可能性がある方法です。
体外受精とは?
それに対し「体外受精」とは、体外で精子と卵子を受精させ体内に戻し着床させるという方法です。
受精させ体内に戻したからといって必ずしも着床すと訳ではないのですが、他のどの方法よりも可能性は大きそうです。
ただ、現在の日本では同性カップルの体外受精はとても難しいのです。
なぜなら同性婚が認められていない日本では同性カップルは独身女性(または男性)となります。
既婚者の体外受精は可能ですが、日本では独身女性の体外受精は倫理的観点から認められていません。
これは法律的に認められていないのではなく、あくまでガイドライン的なもので「認められない」となっているのです。
違法ではないものの、実際に同性カップルに体外受精をしてくれる医師を探すのはとても困難です。
同性カップルが養子を引き取ることは可能?
体外受精は現在では不可能。人工授精は可能ではあるものの、精子提供者を個人的に見つけなければならず、施術も自分たちでやらなければなりません。
体外受精よりは実現可能とはいえ容易いことではありません。そこで、養子の可能性について考えるカップルもいます。
自分たちの血が繋がっていなくても、子どもを育てたい、家族に縁が薄い子どもがいるなら、一緒に家族という縁を作りたい、と考えるそうです。
ただ、この場合も様々な問題があります。
様々な事情から親と離れ離れで生活している状況の子どもを引き取る方法は二通りあります。「里親制度」と「養子縁組制度」です。
里親制度とは?
「里親制度」とは親権が生みの親にあるまま子どもを一時的に預かり、国の支援がある中で生活する制度です。
里親になる条件は特になく、研修を受ければ良いとのことですが、暗黙のルールのようなものがあるそうです。
独身(同性カップルはココに該当しますね)ですと異性の預かりは不可能であったり、保育に順ずる経験がなくては(保育士や学校の先生などの職業経験者)難しかったりします。
確かに、女性であれ男性であれ、独身者が異性の子どもを預かるというのは、不安になってしまう気持ちも分からなくはないですね。
そのほか、夫婦であっても、一定の収入がある事や、里親希望の人の年齢から20から25を引いた年齢の子どもが対象となるなど、法的に決められているわけではないものの、一定の基準があるようです。
では同性カップルが里親となる事は現実問題として可能なのでしょうか?
結果から言えば可能ではありますが、上記に書いたように、保育経験の有無で引っかかることは多いかもしれません。
実はレズビアンに多い職業が医療関係、看護師や作業療法士、鍼灸師、介護士、そのほかでは調理師に美容関係です。
もちろん、様々な職業についているレズビアンの方がいらっしゃいますが、基本的に、一生続けていける仕事を基準に選ぶ方が多いので、医療関係が自然と多くなっていくのではないかと思います。
※男性の同性愛者の方の職業に関しては知識がなく不明ですので一概には言えません
そうなると、やはり里親になるための資格を有している同性カップルは少ないという事になります。
養子縁組制度とは?
「養子縁組制度」は里親制度と違い、生みの親から育ての親に親権を移します。
戸籍上も親子となり生活していくのです。里子とは違い国からの支援も一切ありません。
親になる条件や資格のようなものは特にありませんが、こちらも里親制度のように、暗黙の線引きは引かれているようです。
条件は、里親制度と変わりはないのですが、里親制度と同じく独身ではダメだという決まりは明確にはなく、原則として夫婦共に心身健康である事、などが挙げられている時点で、同性カップルには厳しいものがあります。
友人が選んだ第3の道
私の友人であるレズビアンカップルは一人は調理師、一人は経理関係の契約社員でした。
二人とも真剣に交際し、両親への顔合わせも済ませており、両家仲良くすごしていましたが、20代後半から、本気で子どもを迎えたいと考えるようになりました。
体外受精は可能性がなく、人工授精の精子提供者を見つけることもできないまま一年が過ぎた頃に、養子縁組制度を希望しましたが、調べてみれば見るほど難しい問題に直面した二人はある決意をしました。
それは、同性婚が認められている国へ移住し、養子をとるというものでした。
二人は数ある同性婚が認められている国の中から、本当に同性婚に寛容で差別が少なく、子どもを育てやすい国としてニュージーランドを選びました。
そして3年間、英語を学び、こつこつと貯金をし、一昨年、2013年11月にニュージーランドへ渡りました。
その時点で、子どもを望んでから5年の月日が流れていました。現在彼女達はニュージーランドの日本料理店で仕事をしながら、永住権を取得しようと頑張っています。
日本で同性の結婚はハードルが高い
同性同士の婚姻が認められていない日本では、同性カップルが子どもを育てるのに高いハードルがあります。
性同一性障害の方は戸籍を訂正し、結婚することが可能となった今、同性同士の婚姻を認める日も来るのでしょうか。
日本には現在約3000人の赤ちゃんが乳児園で育てられているそうです。その約半数は里親を必要としていて残りの半数は育ての親を必要としています。
生物学的に見ると不毛でしかない同性カップルですが異性愛者だから親になれるとは限らず、現に、育てられなくて園に預けられている子ども達がいるのです。
実子を儲けることが不可能である同性カップルは、親との縁が薄い子ども達のよい家族になってくれるのではないでしょうか。